1987年にリリースされたOVA『LILY-C.A.T』
押井守監督のタツノコ時代の師匠だった鳥海永行氏が監督を務めていました。キャラクターデザインには梅津泰臣氏(AKITE、MEZZO)が参加しています。
知っている人は知ってるけど、知らない人は『なんだそれ?』なアニメですが、エイリアンと遊星Xを合体させたSFホラーアニメの傑作。
本編で語れなかったシンカム社がLILY-C.A.Tを送り込んだ真相について小説版から紹介します。
ネタバレ注意です。
小説で描かれたLILY-C.A.Tの前日譚
アニメ『LILY-C.A.T』の小説版は監督を務めた鳥海永行氏が書いてます。基本的にはアニメ版と内容は一緒で、本編で語れなかった部分を補足しているような形です。
小説版の最初には、宇宙に旅立つクルーたちがサルデス号に乗船した経緯が、前日譚として描かれています。
その中でも物語の真相に迫れるのが、シンカム社の社長令嬢だったナンシーの前日譚です。
真相ネタバレ①|LILY-C.A.Tをサルデス号に送り込んだのはナンシーの兄
劇中に登場するシンカム社はトミー・ストラウハが一代で築き上げた巨大コンチェルンです。サルデス号出航前においては、高齢のトミーが会長職、長男のドナルドが社長を務めています。社長の四女がナンシー・ストラウハという位置付けになってます。
そして、ナンシーの兄たちもシンカム社に勤務。その内の一人が、LILY-C.A.T開発に関与しており、試作品をサルデス号に送り込みました。
彼は、家族が集まった晩餐会で『宇宙旅行の事故遭遇をゼロにできる新商品を開発中で、サルデス号の出航に間に合わせる』と、社長や会長らに明かしていました。
これがつまり、人工知能を搭載した猫型ロボット”LILY-C.A.T”です。
同席していたナンシーもこの話を一応聞いていて、家族の前でサルデス号乗船に立候補します。ただ、兄が話していた『新商品』がLILY-C.A.Tであることに気づく描写は最後までありません。
シンカム技術部門が急いで完成させた猫型ロボット”LILY-C.A.T”はテストとはいえ、乗員に知らされないままサルデス号に搭載されます。
しかし、製品を届け出がないまま宇宙船に搭載することは違法行為で、『43年後の後日談』で問題になります。
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真相ネタバレ②|LILY-C.A.Tは0.3%の事故確率をゼロにするために送り込まれた
あの時、あの夜、晩餐のテーブルを囲んだ祖父も、父も、とっくに亡くなっている。
航海の安全性。それを保障したのは彼である。
0.3%の事故遭遇の確率をゼロに近づけるために、科学技術開発部に急がせて作らせ、そのテストのためにこっそり搭載させたLILY-C.A.T。
引用:LILY-C.A.T小説版 p.244
兄が晩餐会で明かしていたように、LILY-C.A.T搭載の目的は宇宙旅行における0.3%の事故確率を限りなくゼロに近づけることにありました。
また、シンカム社は莫大な金を投資して、惑星LA-03の開発権を競り落としましたが、調査中に事故を起こした新惑星の権利は格安で買い叩かれます。そのため、事故をゼロにすることは会社にとっても有益だったようです。
ナンシーが可愛がっていたネコのリリィに外見を似せたのは、開発に携わっていた所員の発案。兄はそれを笑いつつも承諾。
サルデス号のプロジェクトに半ば気まぐれで立候補したナンシーが無事に帰還できるよう、兄のせめてもの手向けであったというわけです。
しかし、LILY-C.A.Tは未知のバクテリアを宇宙船の中に運び入れるという災難の元凶を作ってしまい、ナンシー含むサルデス号のクルーは地球に帰還できなくなりました。
そんなことはいざ知らず、LILY-C.A.T開発に携わっていたナンシーの兄はその後、シンカムの社長になります。
LILY-C.A.Tと同型のロボットは製品化もされましたがあまり売れずに、劇中から43年経った地球では製造が終了しています。
アニメ・リリーキャット|シンカム社がLILY-C.A.Tを送り込んだ真相まとめ
今回は、1987年にリリースされたOVA「LILY-C.A.T」について、LILY-C.A.Tがサルデス号に送り込まれた真相についてまとめてきました。
OVAでは諸悪の根源のように描かれるネコ型ロボットのLILY-C.A.T。被害者でもあるサルデス号のクルーは、シンカムという得体の知れない巨大企業に振り回されます。
しかし、実際のところはシンカム社そのものの意向ではなく、ナンシーの兄が主体となってLILY-C.A.Tをサルデス号に送り込んだのが真相です。
悪意を持っていたわけではなく、ナンシー含むサルデス号のクルーたちの生存確率を上げるためでもありました。しかし、LILY-C.A.Tはバクテリアを船内に運び入れるという災難の元凶になり、兄の目論見は裏目に出てしまうことに。
船長マイクは出航前にシンカム社と入念な打ち合わせをしたそうですが、LILY-C.A.Tの件も打ち上げがあれば、このような事故は避けられたのかも知れません。
OVAで語られなかった舞台裏を知ることで、本作の理解に近づけると思います。
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コメント
コメント一覧 (4件)
ゾンビって人間の進化した姿って事になるのかな、なんてくだらない事を考えていたら、学生時代に観たこの作品の事を思い出し、何気無く検索してこのページに辿り着きました。当時はエイリアンのパロディ作品との印象しかなかったですが。コロナの話とか最近の話題が書かれていてびっくりしました(記事が新しい事に)
コメントありがとうございます。
80年代OVAですが、映画的な要素をもっているので『好きな人が意外と多いのでは?』と思い、本編で語られなかった部分を記事化してみました。
コロナの件で、こうしたフィクションも現実味が増した印象を受けています。
『エイリアン的な何か』については、監督も認識していたようで小説版のあとがきで具体的に述べていました。
ーーー小説版の監督のあとがきを引用しますーーー
プロデューサー氏は言葉を続けた。間合いが長すぎたのだ。
『リアルな状況設定による宇宙船もの』
それを創りたいということだった。
即座に『エイリアン』や『遊星からの物体X』等の密室劇が頭に浮かんだ。が、今度は逆に好みの世界から脱けだせないジレンマに陥ったようである。
狙いは昔懐かしい「怪獣映画」だったのですが…
(*^^*)たった今、久しぶりにみました。そうそうここここ、このセリフって、結構覚えているものですね。結構音楽がこわい。ジローの声は亡き沖田さんでしたね。声優さんの声が若い(笑)
坂さん、最近どうされてるのやら…
!Σ( ̄□ ̄;)リリーの本当の目的は違ったんですね!知らなかったです。
初めて見たのは何歳だったか…小学生か中学生だったかな…
兄が買ってきて、兄弟3人で見たのを覚えています。リリーの鳴き声にゾクッとしました。
その後、兄が買ってきた『ロボットカーニバル』の梅津さんのプレゼンスには衝撃を受けました。今見ても、凄まじいレベルで、手書きとは思えない映像美!
((( ;゚Д゚)))遊星からの物体Xは静の怖さがありますよね。ハスキー犬が吠え出して、一匹のハスキー犬が暗がりでじっとしているシーンと、シャーレに入れた血液を熱した針金で押し当てる所。誰がやられてるんだ!?ってドキドキ。
エイリアンもめちゃくちゃこわいです。閉鎖空間で逃げ場がない。デザインした、ギーガさん…フルネーム忘れた…よく思い付きますよね、恐ろしい生命体(汗)
遊星からの物体Xファーストコンタクトも、なかなか良かったです。じわじわ来る怖さは、やっぱり昔の方があります。
リリーキャット、ハリウッドでフルCGで映画化したら良さそう~見てみたい!
(  ̄▽ ̄)
学生時代に大学の図書館で見たリリィキャットを思い出し、ググってたら辿り着きました。
当時、リリィキャットを見た時、洋画のリヴァイアサン(だったかな?)を思い出したよ。
宇宙と深海で舞台は違うけど展開が色々とよく似ている。
製作はどっちが先? そう思って当時調べたらリリィキャットが先でしたね。
たぶんリリィキャットを下敷きにして、あの映画を作ったんじゃないかと思ってます。
そもそもなんで宇宙船にロボット猫が必要なのかが疑問だったけど、ここを読んで理解できましたわ。
ただ、作中で上手く説明するのは尺の問題からも難しかっただでしょうね。